Le Grand Bleu


Directed by Luc Besson

Staring

Jaque Maiyor
Enzo: Jean Leno


これの日本語キャッチがとても素敵で好きでした。
青から蒼へそして藍へ、だったと思います。
本当に、深い「青」い話。

完全版の最初に出てくるモノクロシーンが、とても好きです。
モノクロなのになぜかとても深い藍を感じるのはなぜなんだろう。といつも思わされます。
とても静かな始まりです。それをかき乱すような事件が起こってしまうというのに、
それすらも包み込んでしまうような深い静寂が映画全体を包み込んでいます。

ジャック・マイヨールという、実在のダイバーの話を描いた映画です。
ダイビングが得意な物静かなフランス系移民のジャックは、
父親を海で亡くしてからというもの、海の世界に生きるようになっていきます。
良いダイバーとしてのライバルであったガキ大将のエンゾが、
思い切り人間らしく生きているのと本当に対照的に。
イルカをこよなく愛し、人間と「愛を交わす」ことができなくなっているジャック。
そんな彼が初めて出会い、愛した女性に投げる言葉が
「君はイルカに似ている」。
その女性ジャーナリストが人間的な愛でジャックを愛し、求めることと、
ジャックの人間世界に生きていない彼の夢の世界での愛し方が、
あまりに違いすぎることでふたりはすれ違っていきます。

そしてジャックとエンゾのダイバーとしての競争も、同時進行していきます。
人間的な家族のつながりと「勝利」というものを捜し求めるエンゾと、
海をただ愛し、より深く、一致していたいと望むだけのジャック。
そのふたりが、ダイビングの大会で競い合っていくのです。
…が、ジャックが競っていた意識があったかどうか。
人間としては考えられない、という実験の対象にすらなっているジャックのダイビングと、
そのジャックを超えることをひたすら目指し続けるエンゾ。
人間らしいエンゾと、海に生きるジャックの好対照がここでも描かれます。

その人の人生においてはその人自身が主人公、という描き方をするフランス映画。
リュック・ベッソン監督のこの映画もまたそれに漏れずに、それぞれの登場人物の
主観から描かれ、それがとりどりに交錯し、物語を織り成していきます。
私としては…こういう彼氏は持ちたくないなぁと思いますが。

「ねぇ、何か話をして」という彼女に向かってジャックは、
「人魚の話」をするのです。「本当に人魚を愛していたら、
海のそこに潜ってじっとして待っていると人魚がやってきて、
彼らの世界に連れて行ってくれるんだ。
でも本当に愛しているんでないと、連れていってくれないんだよ」と。

最後に、エンゾが深く潜りすぎて限界を超えます。
医師の制止を振り切ってもぐったエンゾは、ジャックによって助け上げられます。
そしてやっと、自分が海を愛しているということに気付くのです。
勝負とかそういうので潜っていたのではなく。

最後に「何かを見に」行くジャックに彼女が
「行っていらっしゃい。行って、私の愛を見てきて」と、彼を行かせます。
海に呼ばれて行ったジャックがそこで見たものは
すべてを受け入れ自分を行かせてくれた、彼女の愛だったのではないか。
だからこそ、イルカたちが彼を連れて行ってくれたのではないか。そう思うのです。

人間の世界で生きることができなかったジャック。
海の言葉に翻訳してしか、自分に向けられる人々の気持ちを知ることができなかった彼。
キャッチコピーの記憶が正しければ。最後の「藍」は「愛」でもあるのかもしれない。
残った静寂の中で、「愛」を知ることがどんなことなのか、考えさせられてしまう映画でした。


     


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