再会ー9年の絆 at Brighton

― 変わることは良いことだ。変わらないことも良いことだ。


時系列は前後するけれども、私がブライトン駅から彼女の家に着いたとき、
「私がオフィスに使ってるからちょっと狭いかもしれないけれど、ここに泊まって」
と案内されたベッドルームで、私はびっくりするものに出会った。

9年前、私が彼女のところにいたときに使っていたベッドサイドテーブル。
ベッドカバー。クッションカバー。カーテン。
わざわざ揃えたわけでもないのだろうけれども、全部がそこにあった。
いや、もしかしたらそろえたのかもしれないけれども。ジョゼフィンのことだから。
思わず懐かしくてそこに座り込んで落ち着いてしまった(笑)
やっぱり彼女の前では私はまだ16歳なのだ。

そうこうしていると、色々なことが思い出されてきた。
前回来たときのこと、その前のこと、そして一番最初のときのこと。
2回目に来たとき、フリスキー(初めて来た時に飼っていた猫)はもういなかった。
それから色々な変化があったり、色々なことがおきたりして今に至っている。
今は、フリスキーの代わりではない(絶対にない!)のだけれど、
たまに人から猫をジョゼフィンは預かっているらしい。
今回いたのは、ティミーという白いソックスをはいたクロネコちゃんだった。
…その夜、まったく人見知りする様子もなく私のベッドの上で寝ていた…。

外出から帰るともう5時過ぎ。6時過ぎにジョゼフィンの息子たちを迎えに行かないといけない。
慌ててシャワーを使い、慌てて着替え、慌ててメイクして、慌てて車に乗り込んだ。
…とはいえしっかりお茶はしたんだけれどね♪ああ、イギリスだ。
というかああ、ジョゼフィンだ、かな。
車の中で、私は、自分の知っている彼らを思い出していた。

長男のアレックは、5年前に1度会った。9年前、私がいたときには、香港にいたから
でも本当にすれ違う程度だったから、私の頭の中にはアレックは本当にちょっとしかいなかった。
とはいえ、いつも前から聞かされていたけれども。
まじめで、ヒースローからブライトンまで通っていたアレックは、長男っぽくて、
責任感の強い人だった。
アレックのバラ、とジョゼフィンが呼んでいた薔薇があったっけ…。
次男のリチャード。9年間の憧れの人(笑)
というか「満足に話せなかった」という思い出がすごく強いんだと思うのだけれども。
サーフィンが好きで、モノを直すのがうまくて、よくギターを弾いていた。
チョコレートやら甘いものが好きで、いつもカスタードが出ると一番に平らげていたリチャード。
サーフィンのビデオを見ながら解説してくれるのだけれど、全然分からなかった(笑)
いつも海に出ていて、いつも日焼けしていて、いつも友達が周りを囲んでいる。
そんなイメージがとても強かった。
2年前は、私が寝ているときに彼が帰ってきて、私がおきたときには、
もういなくなっていて、結局会えなかった。

車の中で、そんなことを思いめぐらせながら、私はどんどん心配になっていった。
何を話したらいいんだろう?どう話せばいいんだろう?


(ベッドの上でごろにゃんのティミー)

そんなことを考えていた。

車が彼らの家の前に着いて、家の中に招き入れられた。
「ハロー、まいて。久しぶり。」アレックがドアの前で手を差し出してきた。
「ハローアレック。元気にしてた?」そう言いながら私は5年前のアレックと、
今のアレックがあまりに違うので、内心おろおろしていた。
「こっちだよ」と言われてキッチンに通されると、そこには9年前と変わらないリチャードがいた。
まったく変わらなかった(笑)そばかすだらけなところも、
髪が長いところも、日に焼けっぱなしなところも顔つきも。

車に4人で乗り込んで、話をしながらブライトンへ向かう。
後部座席に席を変えて、前にいるふたりの話を聞いている。
相変わらずだなぁぁぁ。変わらないなぁ。と思ったり色々。

レストランでも、アレックは相変わらずまじめに私に気を使う。
リチャードは相変わらずジョゼフィンと、やりあっている。
そういえば4人いっぺんに会うのは初めてだった。
にも関わらず、そんな気がしない。
アレックはジョークが増えていたし、リチャードは前より人に気を遣うようになっていた。
…いや、そりゃあ…9年も経てばそうなのかもしれないけれど。

少しずつお互いに緊張が解けて、前のことを話すようになって、
当時いえなかったことが色々と2人から出てきたりもした。
変わらない部分、同じ部分。
今も同じだよー。こんなことしてるよーとか、今はもう当時好きだったこれはしないんだとか。
当時だったら彼らの話題には入れなかっただろうけれども、
今だからこそ、「Queenはいいのだ!」とか「Princeが好き♪」とか、
「どんな音楽が好き」とか「何をするの?」とか。普通に「ガキ」扱いじゃない会話ができる。

同年代の女性をからかうようにして、リチャードが「Hey,ヒールがかたっぽだけ落ちちゃうぜー」
とか「まいてのために(笑)ゲームセンターの中を通ってあげよう。そうすれば、
ヒールが桟橋に落ちることもないだろう?」とか。
アレックが、「まずはレディからどうぞ(笑)」とか「…パイントガールかい?君は(笑)」とか。
私も「いい年してー。いつまでも子どもっぽいことしてないでよねえ」とか言える。
今までは、なんとなく「国が違う」「歳が違う」ということをとても気にしていた。
まぁ、私が話すことができなかった、ということも往々にしてあるのだけれども。

私の、彼らの中での立場も大分変わったし、彼らに対する私の気持ちも変わっていった。
9年間。あるいは5年間。お互いに変わらない部分もあるし、変わった部分もある。
それが、今の私たちの関係を作り上げているのだろうと思う。
「お兄ちゃん」だと思っていた人たちが、「少し年の離れた友人」になっていきつつある。
その変わり行く関係の中で、お互いの中の「変わらない部分」があるからこそ、
こうしてまた会いに行き、話し続けていけるのかもしれない。そう、思わされる。



         


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