冷静と情熱のあいだ
Calumi Cuori Appassionati
-Rosso-


著者:江国 香織
出版社:角川文庫
ISBN:4-04-348003-2


何かの雑誌に掲載されていたほんの1部を読んだ覚えがありました。
何処だったか忘れたけれど。

同名のタイトルの映画の原作の片割れです。
30を手前にした女性、あおいがミラノで暮らしています。
恵まれた暮らし。恋人のマーヴィンの家に居候し、
時には華やかな場に思い切り着飾って出かけ、
好きなアンティークジュエリーの店でパートタイムをし、
幼い頃を過ごした同じ街で、幼馴染と共に時を過ごし
何不自由のない生活をしています。
傍から見ればなにも欠けたところのない幸せな生活です。

でも、人には見えないところで、あおいには欠けてしまった部分があるのです。
それが何だか、誰も知りません。

あおいの幼馴染、ダニエラは、
日本に留学して帰ってきたあおいのその変化を咎めます。
「あなた、帰ってきてから変よ。扱いにくくなったわ。
やっぱり日本になんて留学するなんて良くなかったのよ」

でも、その日本に留学したことがあおいを満たし
そしてまた、それを失ったことが
あおいの「見えない欠落」を作ってしまったのです。
だから、どんなに「欠けて」しまった部分だとしても
その部分があおいを満たし、また不完全なものにしているのです。

あおいの心を現す江国さんの表現がまたとても活きています。
外から見ればとても完全な生活なのに
どこか不安定なあおいを、とても内省的に描いています。
それが余計に、あおいの見た目と内側のギャップを際立たせています。

10年前の約束を、あおいは果たして果たそうとするのでしょうか。

是非、辻仁成さんのBluと一緒に読んでいただきたいです。


     


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