冷静と情熱のあいだ
Calumi Cuori Appassionati
-Blu-


著者:辻 仁成
出版社:角川文庫
ISBN:4-04-39901-3


何かの雑誌に掲載されていたほんの1部を読んだ覚えがありました。
何処だったか忘れたけれど。

同名のタイトルの映画の原作の片割れです。
フィエンツェに、阿形順正は住んでいます。
イタリア語学校に通う芽実というガールフレンドがいます。
油彩画の修復士として、イタリアでも有名な工房で働いています。
人間関係は複雑だけれども、それなりに認められています。
ドゥオモのクーポラを見上げる順正の心は、
10年前に留まっています。
というより、飛んで行ってしまうのです。
忘れられないささやかな約束事に。

彼が初めてひとりで手がけることとなったコッツァが
何者かによって引き裂かれたことがきっかけで
心の奥に閉まっていた10年間に彼はもう一度光を当て始めます。
日本への帰国、大学の同級生との再会。
その中で彼は「現在」の自分に向き合い、
今の自分がなお10年前と「同じに」約束を信じていることを確認します。

人には忘れられない過去があるもの。
そしてそれを抱えてなお、人は歩いていかねばならず、
その「現在」に向き合っていかなければなりません。
それでもなお、その忘れられない過去があるからこそ
今の自分があるのだと、順正はなお自分を確認します。

彼を見守る祖父の阿形清治の視線の優しさと厳しさが
順正を支えています。
そして、彼はどれだけ気付いているのかわかりませんが、
ガールフレンドの芽実がその破天荒なお茶目な明るさで
順正を支え、励ましているのです。
芽実の誠実な順正に対する愛情があったからこそ
彼は最後まで「信じきる」ことができえたのだと思います。

彼は、約束を果たします。
そこに未来はあるのでしょうか。
過去は未来になるのでしょうか。

是非、辻仁成さんのBluと一緒に読んでいただきたいです。


     


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