Teatime


 ゆっくりと音を吸い込みながら 琥珀色の液体を身体の中に流し込む
ほんのりと渋味を帯びた感触が口の中にすらり、と広がっていく。

ああ、私は今こんなにも幸福だ

身体を変哲のない古びて壊れかけた椅子に沈めて、
手を伸ばせばすんでしまうであろう位置に

読みたい本を3冊 − この前買った中国のとある女性の話
― とある国で禁を犯しながら西欧の文学を読み漁った女性たちの話
―大好きな作家のちょっぴり変わった女性の友情ーでもそれも理解できるーの話

を積み上げて

手を伸ばせばすべて片付いてしまうように周りにバリケードを築き上げて

― 足元に電気ケトルと水のペットボトルを置いて、
どうしてだか痛い右の肩甲骨が楽なようにと、ふたつある枕のうちひとつを
背中にあてがって、アームレストに右脚を放り投げ、膝には大事に羊を抱え込んで
ビスケットの袋を開けてこちらに向けてー

何時間もなにもー紅茶を飲むか注ぐか、ビスケットを食べるかーせずに、
ただ黙々と本を読み続けている。

目を上げると聞きなれた音楽と一緒に、パソコンの画面が目に入ってくる。
というより、目に入るように、わざわざ傾けてある

実際それはバリケード以外の何者でもない。
好きなものだけで埋め尽くされた時間。
安全に自分だけの時間に閉じこもって、自分の内側に入り込む時間。
私は今こんなにもひとり。
内側から鍵をかけて、きっと誰も私に触れない。

音を飲み込んで、私は再びこくり、とお気に入りの淡い寒色系のマグに入った
私の大好きなー何年か前においしい紅当てに使ったー琥珀色をした紅茶を飲み干す。

こんなに遠くで、こんなにひとりで、こんなに離れていると言うのに

私はそう思って 安心してまたマグを持ち上げる

この琥珀は、遠い昔に見たペンダントの色に似ている。
そんな発見が私をもっと 幸福にする。

ああ、なぜこの人の本を読んでいると、こんなことばかり考えるんだろう
そして 途方もなく安全なんだろう。

こんなに遠くて、こんなにひとりで、こんなに離れていると言うのに



     


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