水辺にて


水がオールにひっかかって跳ねる。その飛沫がなんだかきれいでちょっとの間見とれていた。
池の色と、池の周りの木々との色がなんだかちょっと暗め。時期も時期だしなぁ。
そう思いながらぼんやりと空を見上げたり、周りの家族連れを眺めたり。
別に喋ることを思いつかなかったので、黙って相手の顔を見つめてみたり周りを見渡したり、
はたまた脈絡のないことを頭の中に思い浮かべてみたりする。
最近凝っている作家のエッセイや、さっき買った動物の写真集とか。
そういえば、あの写真集の人、他にも出してるみたいだったな…また見てみよう。
さっきまで会っていた友達は、私が爬虫類もかわいいと言うと、
なんだか変なものをみるような目つきをしていた。でもかわいいと思うんだけれどな。
あの、ぎょろっとした目とか…。あ、そこがおかしいのか。みんなにとっては。
んー……。不思議だ。かわいいと思うんだけれどなぁ…。

あ。水が跳ねたっ
「あ…っ」
「ごめん、かかった?水はねたね。」
「うん、大丈夫」

そういえば…この人は動物が余り好きじゃないんだよなぁ…。
動物園とか、行きたいってなかなか言えなさそう…。どうしよう…。行きたいなぁ。
大好きなんだけれどなぁ、動物園……。

目の前にいる相手をじぃっと見つめながら、そんなことを考えていると、
相手はやっぱり気まずそうだった。
「何?何かついてる?」と聞く。
「ううん、別にそういうわけじゃないよ。」
そう答えて笑ってから、またその顔を見ている。
だって、見ていても見飽きないんだもん。

疲れてるのかなぁ。疲れていそうだなぁ。呼び出して悪かったかなぁ。
再び自分の考えに沈みこむ。
さっきの考えがまた回り始める。

私動物好きなんだけど、大好きなんだけど、どうなんだろう。
一緒に行ったら楽しいと思うんだけどなぁ…。
笑う顔が、見たいんだもん。かわいーって。うぅん、でも好きじゃなかったら笑わないか。
と、色々なことを考える。さっき買ってきた写真集を見せたときの反応が、思ったほどでもなかったので
少しだけがっかりしたことを思い出して、はぅ、とため息をついた。
ま…いっかぁ。一緒にいたらうれしい、それで。

「あ…」

側を、カモが通る。
私は幼い頃からカモが大好きだった。この池にも何度も来たし、近くの川へ見に行ったりもした。
カルガモというのは、なんだかとても近しい存在だった。
色々な思い出のいっぱい詰まったカモだから、何となく特別なのだ、私には。
でも、こんなに近くで見たことって、なかったかもしれない。
いや、あったのかもしれないけれど、もう忘れてしまっていたのかもしれない。
そう思いながら、悠々と水面を滑っていくカモを眺めていた。

あ…しまった。また動物ネタだ。カモばっかり夢中になっちゃって…
と思った瞬間だった。思いがけない柔らかい声が飛んでくる。

「ほら、向こうからも、来てるよ。後ろ見てご覧。」

どこどこ?あ、ほんとだぁ…と声を上げて振り返って後ろを見てから、
あれ…?とその言葉に気づいてはっとする。

残念、カモよりその声の主を先に見ればよかった。
今度こそ、と思って思わずカモを見ながら微笑みが顔に浮かぶのを止められない私がいた。

    


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