こんな夜、どう過ごしたらよいのだろうと思う。

ぼんやりと、考え事をするわけでもなく。
私の呼吸を妨げるかのように、時はじっとそこを動かない。
別段、身体が寂しいとか、誰かと喧嘩してモノグルオシイとかそういうんじゃないんだけど
それどころかおなかいっぱいに 満たされているはずなのだけど。
ぽっかりと、穴が開いてしまったかのように心を風が通り抜けていく。

イタリア料理のお店で食べたモツァレラとフレッシュトマトのパスタは、とても美味しかった。
初めての人と飲むにしてはビールもいけた。多少、人を待ったので抜けていたけれども。
テンションはきっと高かったに違いないとは思うけれども、それなりに溶け込めたとも思う。

何がこんなにどうしたんだろう。

なんだか、色のない世界に生きているみたいな気がする。
さっきまではあんなに活き活きとした活気に満ち溢れた世界に私はいたのに。
モノクロみたいなそんな気分になってしまっている。
何気なく自分の肌から、風に煽られて上って来る香水の香りに、
ぎゅうっと心臓をわしづかみにされたようなそんな気持ちになってしまって、思わず目を閉じた。
目を閉じると、真っ暗な中にスタンドの残像が浮かび上がってきて、
ぼんやりとした正体のないその像に言い知れない暗さを感じて、目を開けてしまった。

目の前にあるのは、飲みかけの珈琲のマグ、書きかけの日記、そして、花火の柄の団扇。
使う必要もないくらい涼しい夜に、団扇だけがぽつん、と机の上に放置されている。
赤い花火が、眼に痛い。

あぁぁ、なんでこんなにモノクロなんだろう…

帰って来たままのカバンを、手持ち無沙汰を解消しようとがさがさし始める。
不安がまた胸に飛来する。明日からなんてどうなるか分からないし。
そう思うと目の前に何が来るのか分からなくて、怖くなる。

「やっほう」

ぽん、と、友人からひとこと。
近況報告をお互いにし始める。
話題に触れて、モノクロだった世界が突然、色を持った。
話題がふわりと広がる。ぽんぽんと、小さな蕾が花開く音がする。
パン、と花火が上がる。赤い花火が、空で弾ける。
あの日見た花火が上がる。
モノクロの世界に、たくさんの色彩が広がっていく。
なにげなく、さんきゅ。

カラフルな世界の中に飛び込んできた、そっけないモノクロのスポット。
ここだけモノクロ。なんだか、きゅん、と切ない。
青灰色の布に包まれたモノクロの空間。
そこにだけ、スポットライトが当たっているみたい。

そこだけが、光っているみたい。

Missing Spot.

切ないブラックホール。

    


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