ふわり…と目の前に差し出された花束に驚いて顔を上げると、
そこには思っても見なかった笑顔があった。
「どうしたの?めずらしいのね」
わざと大げさに驚いてそう訊ねるとその花のようにふわりと笑って答が返ってきた。
「うん。なんとなくね。こういうのもたまにはいいかと思って。」
呆れた。私の皮肉にも気づいていないんだから。まったく。自分のしたことに酔ってるのね。
時折この人はこうやって、予期せぬことをする。
やわらかなティッシュで作ったようなスイトピーのブーケを抱えた姿が窓に映って
なんとなく思い出した同じような風景に心を奪われてそこに立ち尽くしてしまった。
「どうしたの?気に入らなかった?」
私の表情に気がついたように、少し眉をひそめてこちらを窺うように訊ねてくるその瞳が
「気に入らないはずが無いのにどうしたんだろう」という動揺を少し垣間見させる。
そんな顔がおかしくて、何となく微笑んでしまうのはもうすでに相手のペースに引き込まれていることの証。
そして微笑みにほっとしたような光を浮かべるこの人は、まるで子供のよう。
時にはこんな優しい思い出もいいかもしれない
そう 時にはこんなDejavuも、いいかもしれない。
ひとりごちてゆっくりと水に手を浸して花を花瓶に散らす。
今日は、どんなおいたにも笑ってあげられそう。