目を閉じて 見えますか
海の中で水を掴むように 腕を伸ばして投げ出して
おぼれてしまった夢は 月の涙となって
下界へ おりてくるのです
一年に 一度だけ
目を閉じて 見えますか
水は水 温まることはなく
冷たく凍らせていく その夢さえもその涙さえも
氷の花を 咲かせましょう
追憶の花が 花開くように
一年に 一度だけ
目を閉じて 見えますか
包むように抱き込むその流れ 柔らかく優しく
腕を曲げて脚を縮めて 小さくなって小さくなって
この胸に この腕に
一年に 一度だけ
目を閉じて 見えますか
温かな春の陽が差し込むパティオで
やわらかな笑顔を浮かべて 微笑んで
花が揺れて風を呼び 風があの日の風を呼ぶ
西風(ゼフュロス)が通り過ぎ 花神(フローラ)を抱きしめる
いずれ来るはずの 葬られた春を垣間見せて
一年に 一度だけ
目を閉じて 見えますか
風が呼んだ風に 旅人は上着をかき寄せる
揺れた花の 冷たさに
人は 凍えてしまうだろう
紫苑の花の 冷たさに
人は 凍えてしまうだろう
氷の花の 悲しさに
人は 凍えてしまうだろう
目を開いて 見ませんか
紫苑
Dental Consonant
花言葉は 「追憶」
14/12/02