言葉にならない 哀しみ
あの日を過ごしたこの場所で 私は4回目のこの日を迎えている
私は 生きている
誰もが動きを止め 誰もが言葉もなく立ち尽くしたあの日
忘れはしない
この道を歩くと 鮮やかに甦るあの日の想い
驚き 哀しみ 怒り そして空白の時間
変わらないこの街は 私にあの日以来の数ヶ月を思い起こさせ
ここを離れた後の 失望をも思い出させる
あの日を過ごしたこの街で 私は再びこの日を迎えている
人々は生き続け 歩き続け 喪ったものを愛しながら
それでもなお 歩いている
私は あなたたちの命をこの命に刻んで
歩いていこう 生きていこう これからもこの先も
たとえ私はあなた方の誰かを 知らなくても
あなた方の誰も 私を知らなくても
私はあなた方の命を この命に刻んで
歩いていこういつまでも この命尽きるまで
「人間」という生物は脆く 儚く弱い
けれどひとりの命は この世を照らす明かりのひとつ
明かりを喪ったなら 何をもって世界は光を得るのか
ひとつの明かりは ひとつの命のともしび
たとえ 小さく脆く儚く 弱いともしびであったとしても
そのともしびは 世界を照らす ひとつのともしび
ひとつのともしびに寄せられた いくつもの優しさと
いくつもの 愛と
ひとつのともしびが 分け与えた いくつもの炎
忘れはしない たとえ私はあなたがたを知らなくても
私の前で 起きたたくさんの哀しみと
たくさんの苦しみと たくさんの涙を
私は忘れない
そして
私は生きよう これからも
あなたたちの命を この命に刻んで
あなたたちの愛した この世界を
あなたたちの明かりとともに 愛して
私は生きてゆこう これからも この先も
あなたたちの命を この命に刻んで
歩いていこう この命 尽きるまで
11/Sep/2004